記録開始
この間の仕事で同僚のフランコが死んだ。
ヤツとプライベートで付き合うような事は無かったが、食堂で見かければ一緒に飯を食うぐらいの仲だった。
いつものように前線にガキどもを立たせて、そのお守りで後方支援に駆り出されていたらしいが、
モビルワーカーから頭を出していたところに流れ弾がズドンと見事に命中。正規兵の戦死者はあいつ一人だって言うんだから、
つくづく運の無いヤツだ。こんなしみったれた火星でガキと一緒にくたばるなんて、俺はごめんだね。
モビルワーカーに乗ってドンパチやるよりも、今みたいに基地の中で適当にやって稼ぐのが俺の性分に合ってる。
面倒な仕事はガキどもに押し付けちまえばいい。
それにしても、近頃ここクリュセじゃあ独立だなんだって、また嫌な雰囲気になってきてやがる。
元々地球の植民地同然の火星だが、地球からの締め付けは弱まるどころかきつくなる一方だ。
最近じゃろくなメシにもありつけやしねぇ。デモも活発化してきていて、ギャラルホルンが目を光らせてるってのが、もっぱらの噂だ。
上の奴らが下手なヤマに手を出してギャラルホルンに目をつけられでもしたら、所詮は民間警備会社のCGSなんてひとたまりもねぇ。
雇われの身の俺としてはマルバのクソ社長が賢明な判断をしてくれる事をただ祈るだけだ。
俺が生まれたときから、いや、厄祭戦からずっと、いつ何が起こるかわかんねぇこんな時代が続いてる。
フランコが死んだからとか、クリュセの独立運動とか、そんな事に流されたわけじゃないが、
少しは自分の生きた足跡ぐらい残してみる、ってのも悪くはない。
そう思って柄にもなく書き始めたのがこの記録だ。
いったい何が残せるのか見当はつかないがな。
http://www.cgscorp.jp/news.php#1713